きっかけは些細な悩みでした。「HDDレコーダーやビデオデッキから吸い出して、フォルダに溜め込んだままのドラマやバラエティー番組のaviファイル。あれを、クルマの中で気軽に見たい」。ただそれだけです。
1本ずつ変換ソフトにかけるのは面倒だし、何十本もあるとやる気が失せます。結果的に、Claude Codeとの会話を重ねただけで、GUI付きのWindowsアプリを2本、実用レベルまで作り上げることになりました。プログラミングの知識はほぼゼロ。やったのは「こうしたい」「ここが使いにくい」「これがずれる」と、日本語で伝え続けただけです。
一番のツボ:録画フォルダをまるごと放り込むだけの一括変換
最初のお願いはシンプルでした。
昔録画したドラマやバラエティーのaviファイルが山ほどあるので、一括してmp4にエンコードしたい。h264/aac。クルマで見るのでビットレートは1600〜1800あれば十分。
これに対してClaudeが用意したのは、ffmpegを使ったPowerShellスクリプトと、動画フォルダをドラッグ&ドロップするだけで一括変換できるバッチファイルでした。画質はCRF基準+上限ビットレート方式にすることで、「元が低画質なファイルは無理に大きくせず、良い素材だけ適正サイズにする」という、ちょうどいい仕上がりに。
一番助かっているのは、まさにこの「フォルダをまるごと放り込むだけで、中の何十本ものドラマ・バラエティー録画が寝ている間に全部mp4になっている」という部分です。1本ずつ設定して回す必要がなく、見たい番組から順にクルマのカーナビやタブレットに転送するだけになりました。
要望を重ねるたびに賢くなっていくツール
ここから、使ってみて気づいた不満を伝えるたびに、ツールが育っていきました。
- ビデオカメラの分割ファイル(
00001.MTS〜00007.MTSなど)→ 名前順に自動連結 - ネットワーク経由の動画で書き込みエラー → 出力先をローカルに自動振り分け
- 何本も変換すると時間がかかる → 進捗%と残り時間を表示
そして「ダブルクリックで使えるGUIアプリにできる?」とお願いしたところ、ドラッグ&ドロップ対応・出力先選択・上書き確認・中止ボタンまで備えた、ちゃんとしたWindowsアプリ(.exe)が出来上がりました。アイコンまで用意してくれたのには驚きました。

ちなみに、ちょっとマニアックな小ネタですが、ファイル名に[720x480 DivX521]のような古いコーデック表記が残っていると、変換後は自動でH264表記に直してくれる機能も地味に仕込まれています。昔のDivX動画は再生ソフトによってはシークがおかしくなることがあるので、変換したことがひと目でわかるのは地味に便利です。
まさかのDVD対応。VIDEO_TSフォルダを渡すだけ
一番驚いたのがここです。家に眠っていたDVDをどうにかしたいと相談したところ、最初はVOBファイルを手作業で連結する方式を提案されました。しかしDVDには本来 VIDEO_TS.IFO という「収録内容の設計図」のようなファイルがあることを伝えたところ——
ffmpegの
dvdvideoデマクサでIFOを直接読み込めます
と、VIDEO_TSフォルダ(あるいはISOファイルやドライブそのもの)を渡すだけで、収録されている中で一番長いタイトル(=本編)を自動判定して変換する機能に進化しました。DVDドライブに F:\ として認識させ、変換ボタンを押すだけ。VOBを手で選ぶ必要はもうありません。
4時間半の番組も、フリーソフトよりずれずにカットできる
もうひとつの成果が「動画カッター」という、切り出し専用の別アプリです。
きっかけは「4時間の録画を前半・後半に分けたいけど、範囲切り出しを2回やるのは面倒」という声でした。そこで、
- タイムラインのサムネイルをクリックして大まかな位置へジャンプ
- カーソルキーや
±1秒/±10秒/±1分ボタンで微調整 - 無劣化(一瞬・画質劣化ゼロ)と正確(多少時間がかかるが指定どおりぴったり)の2モード
- 分割点を複数指定して、1クリックで何本にも一括分割
という機能を持つ専用アプリに仕上がりました。サッカー中継を前半・後半で分けたり、4時間半の長編番組を切り出したりと、実際に日常使いできるレベルです。

使ってみた感想として印象的だったのが「以前使っていたフリーツールは、無劣化カットだと切り位置がずれることが多かったけど、これはずれない」という一言でした。地味な部分ですが、ffmpegの呼び出し方を何度も検証し直した甲斐がありました。
一筋縄ではいかなかった裏側
もちろん、すんなり動いたわけではありません。会話の中では、こんな地味なバグとも格闘しました。
| 症状 | 原因 |
|---|---|
| 日本語表示が文字化けする | PowerShellスクリプトの文字コード(UTF-8 BOM)指定漏れ |
| 2本目以降が変換されない | ffmpegが標準入力を待ってしまい処理が止まっていた |
ドライブ直下(F:\)を指定すると失敗 | 末尾の\が引用符を巻き込んで壊れるWindows特有の落とし穴 |
| 動画の時刻表示がマイナスになる | 「四捨五入」と「切り捨て」の計算ミス |
特に最後のバグは、実際に画面を録画して送ってもらい、そこから抜き出したフレームを見て初めて原因が特定できました。文章だけのやり取りでは気づけなかった不具合です。
AIと作ったツールを「売る」ことについて
余談ですが、「これは販売できるレベルでは」という話にもなりました。結論としては、中核で使っているffmpeg(正確にはlibx264)がGPLライセンスであるため、そのままクローズドな有料製品として売ることはできません。またDVDを扱う都合上、著作権保護に関する日本の法律にも配慮が必要です。今回はあくまで「自分の持っている動画を、自分のクルマで見るための道具」として使う前提で作っています。
なお、ソースコード(PowerShellスクリプト一式)はGitHubで公開しています。興味のある方は覗いてみてください。
まとめ:会話だけでも、実用的な道具は作れる
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発言語の知識 | ほぼ不要(すべて日本語の会話で指示) |
| できあがったもの | GUI付きexeアプリ2本(変換/カット) |
| 対応フォーマット | avi・mpg・wmv・mkv・mts・vob・DVD(IFO/ISO) など |
| 一番驚いた機能 | DVDのVIDEO_TSを渡すだけで本編を自動判定・変換 |
| 一番評価が高かった機能 | 無劣化カットが位置ずれしない高速分割 |
大げさなプログラミングスキルがなくても、「こう困っている」「ここが使いにくい」と伝え続けるだけで、実際に手元で動く道具は作れるんだな、というのが今回の一番の発見でした。
おかげで、押し入れに眠っていた録画の山がようやく「持ち出せる動画」に変わりました。次のキャンプや長距離ドライブでは、車内でのんびり録りためたドラマやバラエティーを見ながら過ごせそうです。
今回のツール2本は、すべてClaude Codeとの日本語の会話だけで作りました。「こういうことで困っている」と伝えるだけで、コードを書く部分はすべてAIにお任せできます。プログラミング未経験の方でも、身の回りの「地味に面倒な作業」を解決する道具が作れるかもしれません。

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